相続について
はじめに
私達は、一生のうち一度は、相続の機会があります。
相続と一概にいっても、先祖代々からの多くの遺産を相続する場合もあれば、一代で築きあげられたマイホームを妻や子に残すという相続もあります。
民法では、法定相続分というのが定められており、法律どおり相続する場合もありますが、遺言により異なる配分にすることも可能です。相続人であればその権利は認められえています。
相続というものについては、普段からよく理解しておく必要があります。
いざ相続ということになってから、あわてて知ろうとしても遅すぎるのです。
相続の仕組みは複雑なところがあり、相続の実体というものを知らないまま過ごしている人が多いようです。
次のようなご相談もよくあります。
「自宅を売却したいが、登記簿の名義がお祖父さんの名義のままだ」
そのような時には、まず相続登記が必要です。しかし戸籍を取り寄せたら、前妻との間に子供がいたとか、遺言が出てきたとか、相続人間で財産の分配についてもめているとか、とかく相続はすぐに解決できない場合があります。
場合によっては家庭裁判所に申立てをしなければならないこともありますので、お電話でも結構ですので早めに司法書士事務所JLOにご相談してください。当方より、お客様への出張などもさせて頂いておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
相続とは?
「相続」 という言葉は、皆さんも耳にしたことはあると思いますが、相続という言葉の意味をはっきりさせておきましょう。
「相続」とは、特定の個人に帰属していた一切の財産的な権利と財産的な義務が、その人の死によって一定の者に、法律上当然に承継されることです。
そして、相続によって財産を承継する人のことを 「相続人」 といい、相続によって財産を承継される人のことを「被相続人」 (亡くなられた方)と呼んでいます。
財産的な権利には、お金、株券、自動車、不動産だけでなく、亡くなられた方がどなたかにお金を貸していた場合には、そのお金を返してもらう権利も含まれます。
一方、財産的な義務には、亡くなられた方がどなたかからお金を借りていた場合には、そのお金を返す義務も含まれることになります。
相続人
1.原則
人が亡くなったときに誰がその相続人になるか、については次のように法律で定められています。
被相続人の配偶者(夫又は妻)は常に相続人となり、
第1順位 被相続人に子があるときは、「被相続人の子」
第2順位 被相続人に子がないときは、「被相続人の直系尊属」
第3順位 被相続人に子及び直系尊属もいないときは、「被相続人の兄弟姉妹」
(なお、胎児は、相続開始の時に既に生まれたものとみなされます。)
子には、「実子」と「養子」がありますが、いずれも相続人となります。
「直系尊属」とは、父母、祖父母、曽祖父母といった人たちをさします(なお、直系の逆が傍系であり、「傍系尊属」の例としては、おじ、おば、が挙げられます。)
父母のうちの誰かが相続人になれば、祖父母や曽祖父母が相続人になることはありません。
しかし、もし父母のうちの誰も相続人にならなければ、祖父母が相続人となり、さらに祖父母が相続人にならなければ、曽祖父母が相続人になるといった具合に、順次親等をさかのぼって相続人となります。
なお、子に実子と養子があるように、父母にも実父母、養父母がいますが、ともに同順位で相続人となります。
2.代襲相続の制度
では、被相続人に子がいたが、被相続人が死亡する前にすでに死亡していた場合はどうなるのでしょうか。
相続とは、死亡した人の権利義務を生きている人に承継させるものですから、死んだ人から死んだ人に権利義務を承継させるわけにはいきません。
しかし、一方で親の財産は、子から孫へと引き継がれていくべきものなのだという一般人の感情があります。
そこで、被相続人に相続開始前にすでに死亡した子がいる場合でも、その死亡した子に生存している子が被相続人にとっては孫にあたる場合には、その被相続人の孫が、すでに死亡している被相続人の子に代わって相続人となるという制度が採用されています。
これが「代襲相続」と呼ばれるもので、第1順位(子)と第3順位(兄弟姉妹)の場合に認められます。
さらに、被相続人Aの相続開始時にAの子B、Bの子Cがすでに死亡している場合であっても、Cの子Dが生存している場合でDがAにとって曾孫である場合には、DはB、Cに代わってAの相続人となります。
これを「再代襲」といい、被相続人の直系卑属が一人でも生きていたら、第1順位の相続人が存在するようになっています。
一方、この再代襲は第3順位の兄弟姉妹には認められません。
相続分
これまでお話した方法によって相続人が一人しかいないということになれば、その唯一の相続人が、被相続人の一切の権利義務をすべて承継することになります。
しかし、相続人は複数いることが普通です。
その場合は、それぞれの相続人が被相続人から相続すべき権利義務の分数的な割合が問題になります。
これが相続分と呼ばれるものであり、この割合をもって計算した相続財産の価額(相続分の価額)をも意味します。
この相続分は、まず、被相続人たるべき者の意思による遺言により定まり、その指定がない(あるいは指定があってもその対象が一部にとどまる)ときは、法律の規定に基づき次のように定められます。
1.配偶者と子が相続人であるとき(第一順位あり)
配偶者の相続分は2分の1、
子の相続分は2分の1。
嫡出子(配偶者との間の子)と嫡出でない子(内縁の者との間の子)があれば、
嫡出でない子の相続分は嫡出子の2分の1。
2.配偶者と直系尊属が相続人であるとき(第一順位なし)
配偶者の相続分は3分の2、
直系尊属の相続分は3分の1。
実父母、養父母の区別なく同親等のものは均等の相続分を受ける。
3.配偶者と兄弟姉妹が相続人であるとき(第一順位、第二順位なし)
配偶者の相続分は4分の3、
兄弟姉妹の相続分は4分の1。
父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1。
相続放棄
相続人になったとしても、財産が得られることになるとは限りません。たとえば、被相続人であるお父さんが莫大な借金を残してお亡くなりになった場合は、そのまま何もしないと息子さんにはお父さんの莫大な借金を返済する義務がそのまま承継されることになってしまいます。
そこで、自己のために相続開始があったことを知った後、相続人は、全く権利義務を承継しないという選択をすることもできます。
これを「相続の放棄」といいます。相続放棄をする場合には、「自己のために相続開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に」しなければなりません。
一方、普通に一切の権利義務を承継することは相続の単純承認と呼ばれますが、自己のために相続開始があったことを知ってから3ヶ月間何もしないでいると単純承認したことになってしまいます。
遺産分割
誰が相続人となり、それぞれの相続人の相続分がどのようにして計算されるのについてはこれまでにお話したとおりです。しかし、あらゆる相続財産が共同相続人の共有状態のままでは、何かと不都合です。
たとえば土地を複数人で共有している場合は、そのうちの一人の共有者が他の共有者の何の承諾もなく、その土地を造成するようなことはできません。ですから、あらゆる相続財産が共同相続人によって共有されるよりは、それぞれの相続人が個々の相続財産を単独で所有するように相続財産を分割したほうが、相続人にとって都合がよいことが多いといえます。
このように、相続開始後に相続財産を相続人が数人で共同承継している場合に、この共有関係を解消するため各相続人の持分に応じてその相続財産を分配する手続のことを 「遺産分割」といいます。
遺産分割を決定する方法としては、共同相続人の協議によることが一般的ですが、原則として必ず相続人全員が協議に参加しなければなりません。
相続登記に必要な書類
亡くなられた方(被相続人)が不動産を所有されていた場合、被相続人の方が亡くなった時点では、不動産の登記簿上の名義は被相続人の方のままになっています。この名義を相続人の方に変更するには、法務局で登記申請をする必要があります。この登記申請には、まず以下の書類が必要になります。
1 | 被相続人(亡くなられた方)の方が亡くなったことが記載されている 戸籍謄本 |
1通 |
2 | 被相続人の方の戸籍附票または本籍地の記載のある住民票除票 | 1通 |
3 | 被相続人の方の出生時からの戸籍謄本もしくは除籍謄本等 | 各1通 |
4 | 各相続人の方の戸籍謄本 | 1通 |
5 | 相続登記の名義人となられる方の戸籍附票又は本籍地の記載のある住民票 | 各1通 |
6 | 各相続物件の固定資産税評価証明書 | 各1通 |
このほかにも、次のような書類が必要になる場合があります。
相続人となるべき方が 相続放棄をされた場合 |
家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書 |
遺産分割協議がされた場合 | 遺産分割協議書(協議者の印鑑証明書付) |
ケースによっては、特別な書類が必要になることもありますので、詳しくは当事務所に ご相談ください。
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