起業を思い立ったとき知っておきたいこと<その8>
定款 - 相対的記載事項 Part.1
前回まで、3回にわたって定款の絶対的記載事項についてでしたが、今回から、定款の相対的記載事項について書きます。
絶対的記載事項というのは、その記載がなければ定款として無効となる事項でしたが、相対的記載事項とは、定款自体の効力には影響しないが、定款に記載しないとその事項自体の効力が認められないというものです。
具体的には次の事項です。
(1)変態設立事項
(2)設立時発行株式に関する事項
(3)発行可能株式総数
(4)監査役、代表取締役、会計参与、会計監査人の設置
(5)取締役会、監査役会の設置
(6)株式の譲渡制限に関する定め
(7)種類株式に関する定め
(8)株主名簿管理人の設置に関する定め
(9)役員等の責任の減免に関する定め
(10)剰余金配当の定め
(11)取締役会の招集通知期間の定め
(12)役員等の任期の伸長
(13)取締役の選任についての累積投票の排除
(14)株券発行の定め
(15)単元株式数
(16)補欠監査役の任期
(17)清算人の定め
では、ひとつずつ、みていきましょう。
(1)変態設立事項
変態設立事項とは、『発起人の受けるべき特別利益』 『現物出資』 『財産引受け』 『発起人が受けるべき報酬』 『会社の設立費用(定款認証にかかる印紙税、設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みの取り扱いをした銀行等に支払うべき手数料及び報酬、変態設立事項を調査するために裁判所により選任の決定がされた検査役の報酬、株式会社の設立の登記の登録免許税はは除く)』等のことをいいます。
これらの事項が発起人によって濫用されたり、不公正に行われると会社の財産的基礎が害される危険性があるため、定款に記載しなければ効力を生じない、とされたものです。
その趣旨から更に、これらの変態設立事項は、裁判所の選任した検査役の調査を受けなければなりません。
現実には、発起人に対する特別の利益や報酬は支払わず、設立費用などは会社の負担としないで、発起人が負担するのが通常です。
そこで実際に問題となるのは『現物出資』と『財産引受け』といえるでしょうか。
『現物出資』
通常は、金銭を出資しますが、金銭以外の財産を出資することを現物出資といいます。
たとえば、車や不動産などです。
現物出資する者の氏名または名称、その財産及びその価格、ならびにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数を定款に記載しなければならない、というものです。
『財産引受け』
財産引受けとは、発起人が設立中の会社のために、株式会社の設立を条件として株式引受人、または第三者から一定の財産を株式会社の成立後に株式会社の成立後に譲り受けることを約する契約をいいます。
この場合も、譲渡人の氏名または名称、その財産及びその価格が、定款の記載事項です。
現物出資も財産引受けも、裁判所の選任した検査役の調査を受けるのが原則ですが、次の場合は、その手続きを省略することができます。
・現物出資および財産引受けの目的となる財産について定款に記載され、または記録された価格の総額が500万円を超えない場合。
・現物出資財産のうち、市場価格のある有価証券について定款にきさいされ、または記録された価格がその有価証券の市場価格を越えない場合。
・現物出資財産、財産引受けの目的財産について定款に記載され、またはきろくされた価格が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、または税理士法人の証明(現物出資財産が不動産である場合にあっては、不動産鑑定士の鑑定評価も必要)を受けた場合。
では、定款の相対的記載事項、Part.2 に続きます。