毎日暑い日が続いていますね。
今日は、事務員の畠山が、相続税対策についてご紹介します。
一般社団法人の設立で節税
自社株譲渡の手法として近年注目を集めているのが、一般社団・財団法人を使った負担軽減策です。「持分のない法人」である一般社団・財団法人は、通常の会社のようには株式を持たないため、法人の持つ財産は個人の所有とみなされず、相続税の課税対象になりません。
中小同族会社の相続では自社株が主たる相続財産となるため、社長個人から一般社団・財団法人に財産を移せば、相続税負担を免れることができるわけです。
従来は主務官庁の定める厳しい基準を満たさなければ設立できませんでしたが、平成20年の公益法人制度改革によって、誰にでも容易に設立が可能になったことから、相続税対策としてクローズアップされています。
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一般社団・財団法人を使って相続税負担を軽減する方法は、大きく分けて2通りあります。
1つ目は、公益目的の事業を行い、国から「公益認定」を受けることです。公益法人への財産の譲渡や贈与は、相続税も譲渡所得税も一切かからず、税負担の面からみれば最も効果があるといえます。
2つ目は、社長から法人へ財産を時価で譲渡する方法です。この方法では相続税がかからない代わりに、時価が取得価額より高ければ譲り受ける法人に法人税がかかります。それらの税負担と相続税負担額を比較して、節税効果があると見込めるときに活用すべきでしょう。
ただしこれらの方法には、それぞれ利用する上で注意すべき点があることに気をつける必要があります。
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公益法人として認定される方法は、税務面のリスクなどがまったくない反面、認定を受けること自体が非常に難しいことが挙げられます。認められるための公益目的事業とは実質的には図書館や博物館の運営、学生生徒への学費の支給や貸与、研究施設の運営、学術研究への助成金支給など非常に限られたものとなっており、さらに贈与した財産は公益事業に直接使用しなければならないなど、要件がかなり厳しいものとなっています。また一度承認されても将来的にそれらの要件を満たせなくなれば取り消されるため、一時的な相続税対策としてではなく、将来にわたり篤志家として永続的に公益事業をやっていくという強固な意志が必要とされるわけです。
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また2つ目の相続税以外の税負担を受け入れる方法では、将来的には相続税を課税されるリスクがあることを認識する必要があります。
一般社団・財団法人の財産が相続税の対象とならないのは、法人の財産が「誰のものでもない」ためです。そのため、もし財産が「実質的には同族会社が支配している」と認められれば、相続税の対象になります。現在のところ否認された例はありませんが、将来的に否認されたり、課税当局が法改正になり通達改正なりで網をかけたりする可能性があることに留意する必要があります。
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さらに、中小企業の事業継承では後継者に株式を集中させることで経営権を確保することが重要となりますが、「持分」のない一般社団法人では経営権の集中ができません。後継者を理事長に据えても、将来的には家族以外の誰かが入ってきて法人を乗っ取られるリスクは排除できないことは覚えておく必要があります。
※納税通信 2015年8月3日(第3383号)より抜粋
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