支店の設置・移転・廃止の登記
支店とは
商法上の支店とは、会社の営業について地域的に限定された範囲で独立して取引の行われる営業所のことを言います。
つまり、本店とは別に独自の営業活動をし、対外的にも支店として独立して取引をなしうる人的・物的な組織を備えていることが必要になります。
支店には、下記の法律上の効果が生じます。
- 支店における取引についての債務履行地となります。
- 裁判の場合の管轄決定の基準になります。
- 事業譲渡の目的になります。
- 支配人を置くことが出来ます。
支店の設置・移転・廃止
設置・移転・廃止のいずれの場合も、本店所在地の登記所と支店所在地の登記所に登記申請します。
本店と異なる場所で単に一時的な営業所や出張所として設置するような場合には支店設置の登記は必要ありません。しかし、会社は、本店以外に新たに永続的な営業拠点を設置した際には、支店設置の登記が必要になります。
また、すでにある出張所や営業所を支店に昇格させるというような場合も支店設置に当たります。
支店に関する事項は会社の営業に属し、取締役会の決議(取締役会がない場合は取締役の過半数の一致)によって支店設置する旨と場所、支店移転する旨と場所あるいは支店廃止する旨を決定します。(会社法348条、362条)
定款で支店所在場所を定めており、その所在場所に変更を生ずる場合、定款を変更することになりますので株主総会決議で決定しなければなりません。
登録免許税
支店の設置・移転・廃止をした場合には、本店の所在地だけではなく、支店の所在地においても登記をする必要があります。
本店所在地における登記では、支店の設置については支店1か所につき6万円、移転については支店1か所につき3万円、廃止については申請1件につき3万円の登録免許税がかかります。
支店所在地における登記では、9,000円の登録免許税がかかります。
なお、支店設置の登記をすると、商号や本店・支店の所在場所に変更があった場合、本店の所在場所を管轄する法務局だけでなく、支店の所在場所を管轄する法務局にも登記申請をする必要があります。
登記期間
この支店設置・移転・廃止も本店移転と同様、本店所在地で2週間以内に登記しなければなりません(支店所在地は3週間)。
2週間以内に登記しないと過料に処せられる場合もありますので、早めに手続きをすることが重要です。
ご用意いただくもの
- 取締役会議事録(取締役の決定書)
支店を設置する旨とその場所、移転する旨と移転先、廃止する旨を決定した際の議事録が必要です。 - 株主総会議事録
定款で定め支店所在場所が変更になる場合、移転・廃止を決定した株主総会議事録が必要です。 - 委任状
司法書士に本店移転登記を依頼する場合、登記委任状が必要です。
会社の実印 委任状等申請書類にご捺印いただきます。
株式会社の支店設置・移転・廃止の登記と関連する登記
株式会社の支店設置・移転・廃止の申請にあたっては、支配人の選任・移転・廃止の登記も同時に申請されるケースが多いです。
同時に申請することで実費負担や手続負担を軽減できる場合があります。
支配人選任
設置した支店に支配人を置く場合、本店の管轄登記所には支店設置の登記と支配人選任の登記を申請します。
支店の管轄登記所には支店設置の登記を申請します。
支配人を置いた営業所の移転・廃止
移転・廃止する支店に支配人を置いていた場合、支店移転・支店廃止の登記と同時に、支配人選任の登記・支配人を置いた営業所の廃止の登記も申請しなければなりません。
支配人とは
支配人とは、商人(会社を含む)が選任した特定の営業所(商法)・本店又は支店(会社法)の責任者たる商業使用人のことです。
支配人の権限
支配人の権限は、裁判上の行為も含めその営業所(本店又は支店)における事業(営業)に関する一切に及びます(21条1項、会社法11条1項)。
つまり、支配人は対外的に商人(会社)を代表する包括的な代理権(代表権)を有することになります。
また、他の使用人を選任または解任することができます(会社法11条2項)。
そして、支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできません(21条3項、会社法11条3項)。
そのため、例えば1億円以上の取引は本社の決済を必要とすると会社内部の規則で定めていたとしても、取引の相手方が内部規則を知らなかった場合は、取引の効果は会社に帰属することになります。
つまり、登記された支配人は、商売に関する限りでは、実質的に(訴訟も含めて)代表取締役と同じような権限を有することになります。
また、支配人は会社に対して、善管注意義務、報告義務、競業避止義務、営業避止義務などを負います。